「オーガスタを楽しむ」(1999年)

石川遼ちゃんが、特別枠で、招待されたため、今年のオーガスタでのマスターズトーナメントは、日本のゴルフファンにとって、引いては、日本中が熱狂することになりそうである。是非とも怖いもの知らずの内に、決勝に残って、優勝争いに加わってほしいものだ。プロになって1年で予想もしない大活躍をした遼ちゃんには、まんざら、可能性が無いことはない気がする。大半の人は、ゴルフはそんなに甘くないよと言うかもしれない。いかなる結果が待ち受けているかは、神のみぞ知るだが、遼ちゃんには、思い切りぶっかって、色々な経験をして欲しいものだ。
オーガスタを懐かしんで、小生が、1999年に、家内とともにマスターズを観戦した時のレポートをこのブログに載せる。
「オーガスタを楽しむ」(1999年)     日本ゴルフ学会  村田 久(GCC-10年度卒)
 昨年、プラチナチケットとも言われるマスターズの入場券がひょんな事情から入手出来、4月6日に家内と旅立ちました。米本土上陸は初めてですが、怪しげなブロークンイングリッシュと、欧州旅行4回という豊富な(?)海外経験と、年齢から来る図々しさを武器に、日本でフライトとホテルだけ決め、「後は、ままよ!」と出かけました。
 ロゴマークにも見られるように、オーガスタは米国東南部のジョージア州の田舎町で、同州アトランタから東へ139マイル。マスターズウイークで、半年の経済を賄うと云う、普段は極めて静かな町だそうです。
 マスターズは町の中心部にあるオーガスタナショナルゴルフコースで行われます。地元の少年少女達もパーキングの呼び込みに駆り出され、何処へ行っても「エンジョイ・マスターズ」と声を掛けられる程に、町ぐるみの歓迎ムードです。                          後で訪れた大都会ロスのやや冷たく感じられる合理主義的ドライさとは大違いです。唯一不満は、食べ物が量に比べて大味なことでした。
千載一遇のチャンスとばかりに、欲張った観戦プランを立てて臨んだのですが、連続18回来ているというカメラマン氏は、3、4回目でやっとコツが分かりかけると言います。確かに途中で気力・体力のペース配分の大切さを悟りました。                          毎年変貌するのですが、今回最大の変革は、ラフの芝を1.6センチから3.5センチに伸ばしたこと、2番と17番のティーイング・グラウンドをそれぞれ25ヤード後方に下げたことでしょう。
 印象は、戦略的なコースのレイアウトはともかくとして(極端な言い方をすると、グリーンを制する者がオーガスタを制するという感じの、ポテトチップスのようなグリーンが最大の特色と思いました。)よくぞここ迄自然を着飾り化粧を施したものと思われる程に、美しく仕立て上げられ、先ずはユートピアと言ったところでしょうか。                               クリーク、橋、松林などの大道具に、草花・枯れ松葉などを小道具として、この広大な舞台を仕上げた演出には驚嘆しました。
 枯れ松葉を、全ての樹木の根本に敷き詰めた茶色と緑のコントラストをベースに、アゼリア(つつじ)・ハナミズキ・藤・木蓮などの花の赤・橙・ピンク・紫・黄・白と実にカラフルで鮮やかな配色の妙は何とも言えません。パトロンも、老若男女、大半が短パン(日本では滅多に見られぬほどの力士並みの体型をした若い男女が多いのにびっくり)で、カラッとした暑さにふさわしい軽装で、それでいて、オペラグラス・携帯椅子などを携えているのには、実に観戦上手と見受けられました。                                              我々より、10歳くらい年上のカップルも数多く見受けられました。驚いたことに却って年齢の行った男女の方が、普段からのジョギングなどの「運動習慣」を伺わせる、締まった、格好の良い足をしていました。                                            勿論妙齢の女性の脚線美も数多く見られ、目の保養になりました。
十数枚の毎年の入場券を帽子につけて、得意げにフェアウエイを家族とともに歩く老婦人には、その方の「年に一度」の生き甲斐を見た思いでした。
 さて肝心のマスター達のプレー振りについては、人気面で一、二を競うのは、パーマーとノーマンの二人で、三番手以下のプレーヤーとの差は明らかでした。パーマーは、歳を感じさせぬほどの若さでアーニーズ・アーミーを引き連れての二日間でした。今日のアメリカのゴルフの隆盛をもたらした功労者として当然と思われます。もう一人の功労者のニクラスのプレーが見られなかったことは誠に残念でした。
 ノーマンがアメリカンドリームを体現した割には、メジャーの勝ち星がないことへの同情からか、優勝したオラサバルが気の毒になるくらいの判官贔屓でした。最終日18番グリーン左サイドに6時間も陣取って観戦していた私どもの耳に、地鳴りのような大歓声が二度ほど聞こえて来ました。
 一つはノーマンが13番でイーグルパットを決めたときであり、もう一つはラブ三世が16番のミラクルチップインバーディーを決めた時であろうと、後になって分かりました。技術的には後者のミラクルは後世に語り継がれるほどのショットではないでしょうか。
 大多数のプレーヤーがフィニッシュまできれいなスイングプレーンを作り上げていることは、理想のスイングを探求せんと心掛けている小生にとっては大変興味深いことでした。
 最後にマスター達は、技を競うと同時に、誰が最も紳士らしくプレーしたかの判定を、パトロンに望んでいるに違いないと感じました。