mura-Qの養生訓

私は69歳の整形外科医ですが、私の健康法を、体験談としてお話します。実は略一年程前には肥満に悩んでおりまして、身長159cm・体重62kg・ズボンのウエストは90㎝、腹の出具合は内臓脂肪ばっちりの針を刺せばパチンと破裂しそうな状態でした。体脂肪率も28位だったと思います。勿論血液検査をすれば、コレステロール・中性脂肪・空腹時血糖・肝機能など軒並み異常だらけでした。食事と言えば、食べれば皆血となり肉と成ってしまう気がして、食欲はあるのに、食べるのが恐ろしい感じでした。おかずが多いと家内に文句を言う始末でした。
それが、それがなんと最近のデータでは体重56.5 kg・ウエスト83.5㎝・体脂肪率17位となっています。
何故こうなったのか自分でも不思議な気がします。ミニピラティス法とでも言いましょうか。先ず初めはゴルフに出かける日の、布団の中で始めた5分程度のストレッチでした。やっているうちに色々と職業柄、関節筋肉の作用状況などを自分で感じながらのストレッチとなり、瞑想の時間ともなりました。色々と考えているうちに30分-1時間となることもありました。物の本にキチンと書かれていることもあれば、全然学んだことも無いようなことも、実体験しつつ思い浮かんできました。筋肉の伸び・収縮・リラックス・対立筋の働き・対立筋の筋トレ・腹式呼吸・横隔膜の動き・関節の可動域・自律神経への影響・新陳代謝・心身のリラックスの関連性・ゴルフの身体の使い方等々です。
そしてめぐり合ったのがフィットネス界では、かなり前より取り入れられているリハビリテーションの一手法としてのピラティスメソッドです。平成18年7月23日に浜離宮朝日ホールでアメリカからBrent Anderson 医学博士が、日本の整形外科学会およびリハビリテーション学界にそれを広める目的で招待されて、講演されたのです。アメリカではタイガーウッズもスポーツリハビリとして採用しているとの事です。偶然とは言え、自分が考えて来たこととかなり一致している事が多いのです。ピラティスとはドイツ人の名前で19世紀に自分が病弱であったので、それを克服するために、この健康法を考え出したのだそうです。その後世界中の人々がその方法を追求研究して今はきちんと体系化されてその本部はフロリダのマイアミにあるとの事です。たとえて言うなら日本のヨガに似ているようです。先ず大前提としてこれを行うにあたってモチベーションが大切であるとの事です。
次に私が実践して来たMura-Q発案のミニピラティス法の一端を列挙してご紹介します。
1) 短時間で原則毎日行うこと。1日10-15分程度。(忙しい時は例え5分でも良い。)時間のかけ過ぎは長続きしない。勿論時間的余裕のある時は時間をかけても良い。
2) 全身関節と言う関節のほぼすべてのストレッチを行う。手足同時に行う。出来れば斜め方向に捻る。関節の可動域を一日一回でも限度いっぱいまで動かす。
3) 基本的なルーチンを決め、手際よく進める。
4) 普段やったことの無いような形のストレッチが大変効果的。
5) 回数はセット5回も6回もやらなくて良い。時間がかかり過ぎてしまう。各関節2回位が妥当。一回づつゆっくり、伸ばす側と反対の筋肉(拮抗筋・対立筋)に充分に力を入れる。力を入れた筋肉は、かなり筋力が働き、筋トレになる。
6) なるべく暖かい環境で行う。布団の中とか暖かい浴室などで。寒いところでは筋肉が縮んでしまい十分なストレッチ効果が上がらない。
7) ナガラ族大いに結構。テレビを見ながら歯を磨きながらなど。
8) 少しの反動はつけても良い。
9) 筋肉は収縮・伸張―此れは緊張状態。-のほかにリラックスが大切。ストレッチの合間にふーっと力を抜くことも大事。
10)腹式・胸式呼吸も取り入れる。自律神経系にも好影響を与える。
11)腹式呼吸に伴う腹筋運動(お腹を思い切り凹ましたり、膨らましたりする)はお腹の出っ張った人には極めて効果的。内臓脂肪がどんどん絞れてくる。
12)時に自分の手足を使って収縮筋に抵抗を与えたり、或いはストレッチを補助したりするのも良い。
13)スポーツに役立てる目的の場合は、筋力をつけるところと筋肉のしなやかさを作り上げるところを間違えないように。例えばゴルフの場合、躯幹部分は筋力をつけるように、四肢は主として関節可動域を広げるようにやわらかい筋肉を育てる意識が必要。
14)スポーツ後の疲労回復には入浴中の軽いストレッチと四肢末梢からのマッサージが効果的‐疲労物質を成るべくその場で筋細胞から血管のほうへ移行させるようにする。カラスの行水は疲労の大敵。疲労を成るべく持ち越さない。入浴中のハードなストレッチは筋腱が伸ばされ過ぎて返って良くないようだ。要注意です。運動後の痙攣防止効果もある。
15)スポーツの技術向上のために、インナーマッスルを鍛えるとビッグマッスルが効果的に働く。
 以上やや冗長となりましたが、少しでも参考にして、今後の健康管理に役立てて下されば幸いです。